「なんだか、特定の利用者さんから避けられている気がする…」
「一生懸命やっているつもりなのに、冷たい態度をとられて辛い…」
介護の仕事に真摯に向き合っている人ほど、そんな悩みを抱えがちです。
そのお気持ち、10年以上現場を渡り歩いてきた私には痛いほど分かります。

実は、良かれと思ってやっているその言動が、知らず知らずのうちに利用者さんを不快にさせているのかもしれません。
この記事では、多くの介護現場で見てきた利用者から嫌われる介護職員に共通する「7つの言動」と、明日からすぐに実践できる具体的な「完璧対処法」を、私の経験を交えながら徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたの心が少し軽くなり、利用者さんとの関係を改善するヒントがきっと見つかるはずです。
- なぜか利用者から嫌われる介護職員がやりがちな【7つの言動】
- 利用者から嫌われる状況を解決する介護職員のための完璧対処法
なぜか利用者から嫌われる介護職員がやりがちな【7つの言動】
介護の現場で長年多くの職員を見てきましたが、不思議と利用者さんから敬遠されがちな職員には、いくつかの共通した特徴があるように感じます。
もちろん、利用者さんとの相性もありますし、認知症の症状が影響している場合も少なくありません。
ですから、決して「あなたが100%悪い」ということではないのです。
それを大前提として、まずは「もしかしたら、自分も無意識にやってしまっているかもしれない」という客観的な視点で、これから挙げる7つの言動をチェックしてみてください。
これは、自分自身を責めるためのものではなく、より良いケアへの第一歩として、自分を振り返るためのリストです。

【言動1】感情が態度や表情にすぐ出てしまう
介護の仕事は、感情労働の側面が非常に強いです。
人間ですから、イライラすることもあれば、疲れて顔に出ることもあります。
しかし、その感情がコントロールされずに態度や表情にそのまま表れてしまうのは、プロとして避けたいところです。
隠しているつもりの「不機嫌サイン」
自分では隠しているつもりでも、ため息、眉間に寄ったシワ、面倒くさそうな声のトーンといった無意識のサインは、驚くほど相手に伝わっています。
特に人手不足で時間に追われがちな特養で働いていた頃、忙しさのあまり無表情でケアにあたっていた同僚が、利用者さんから「あの人は怖い」と陰で言われていたことがありました。
本人は全く悪気がないどころか、むしろ効率的に動こうと必死だっただけに、この評価は彼女にとって大きなショックだったようです。
利用者はどう感じるか
介護を受ける立場の利用者さんは、職員の些細な表情の変化にとても敏感です。
不機嫌なサインを感じ取ると、「何か悪いことをしただろうか」「忙しいのに申し訳ない」と不安になったり、威圧感から萎縮してしまったりします。
こうした小さなすれ違いが、利用者さんとの間に見えない壁を作ってしまうのです。
【言動2】「~してあげる」という恩着せがましい態度
「トイレに連れて行ってあげる」
「食事を食べさせてあげる」
私たちはつい、このような「~してあげる」という言葉を使いがちです。
もちろん、多くの場合、深い意味はなく、単なる言葉の癖でしょう。
しかし、この「あげる」という言葉の裏には、無意識の「上下関係」が隠れていることがあります。

言葉の端々に出る「上から目線」
この言葉が癖になっている人は、介助中に「だから言ったでしょ」「こうしないとダメですよ」といった、相手をコントロールしようとするような、偉そうな態度や言葉が出やすい傾向にあります。
介護は利用者さんの生活を「支援」する仕事であり、「支配」する仕事ではありません。
私たちはあくまで対等なパートナーであるべきです。
なぜこの態度が嫌われるのか
介護が必要な状態であっても、誰しも一人の人間としての尊厳やプライドを持っています。
恩着せがましい態度は、その尊厳を真正面から踏みにじる行為にほかなりません。
「助けてもらっている」という負い目を感じている利用者さんであれば、なおさらその言葉に傷つき、心を閉ざしてしまうでしょう。
【言動3】利用者によって態度をコロコロ変える
介護現場あるあるですが、お気に入りの利用者さんの前では満面の笑みで丁寧に対応するのに、そうではない利用者さんには途端に無愛想になる職員、あなたの職場にも一人はいませんか?
このようなえこひいきは、人間関係のトラブルの元凶です。

「えこひいき」がもたらすもの
特定の利用者だけを優遇する態度は、他の利用者さんからの不満や嫉妬を生むだけでなく、職員間の人間関係にも悪影響を及ぼします。
「〇〇さんは、Aさんの対応ばかり熱心だ」といった不満は、チームワークを著しく乱します。
結果として、フロア全体の雰囲気が悪くなり、それは利用者さんにも伝染していくのです。
周囲は意外と見ているという事実
本人はうまくやっているつもりかもしれませんが、その態度の違いは、他の利用者さん、同僚、そして面会に来たご家族など、驚くほど多くの人に見られています。
「あの人は人によって態度を変える」というレッテルは一度貼られてしまうと、なかなか剥がすことができません。
信頼を失うのは一瞬ですが、取り戻すのは非常に困難です。
【言動4】馴れ馴れしい言葉遣いや近すぎる距離感
利用者さんとの距離を縮めようとするあまり、言葉遣いが馴れ馴れしくなったり、物理的な距離が近すぎたりすることがあります。
親しみを込めたつもりの言動が、相手にとっては不快な「無礼」と受け取られている可能性を忘れてはいけません。

親しみと無礼の境界線
- いきなりのタメ口
- 相手が望んでいないあだ名で呼ぶ
- 必要以上のボディタッチ
これらは、相手との関係性を無視した一方的なコミュニケーションです。
特に、人生の長い道のりを歩んでこられた利用者さんに対しては、敬意を払うのが基本です。
私が以前勤めていた、接遇マナーに厳しい有料老人ホームでは、言葉遣い一つでご家族からクレームが入ることも決して珍しくありませんでした。
一方で、長年担当している訪問介護の利用者さんとの間では、ある程度親しみを込めた言葉遣いが信頼関係の証となるケースもあります。
大切なのは、相手がどう感じるかを常に観察し、関係性に合わせてコミュニケーションの形を調整していくことです。
【言動5】機械的で流れ作業のような対応
時間に追われる介護現場では、どうしても効率が優先されがちです。
しかし、効率を求めるあまり、心がこもっていない機械的なケアになってしまうと、利用者さんは自分が「モノ」のように扱われていると感じてしまいます。

効率化の罠にはまっていないか
- 目も合わせずにオムツ交換をする
- 食事介助中にテレビばかり見ている
- 返事が「はい」「うん」だけで会話が続かない
このような態度の悪い職員による流れ作業のような対応は、利用者さんから「心」を奪い、深い孤独感と疎外感を与えます。
現在の事務職の立場から現場のシフトや業務内容を見ていると、いかにスタッフが時間に追われ、ギリギリの状態で働いているかがよく分かります。
だからこそ、意識して「あなた個人」に向き合う姿勢が、ほんの一瞬でも大切になるのです。
【言動6】利用者の話を最後まで聞かずに否定・遮断する
利用者さんからの訴えに対して、「でも」「だって」「どうせまたいつものことでしょ」と、話を最後まで聞かずに決めつけて対応していませんか?
その一言が、築き上げてきた信頼関係を根底から覆す、決定的な一打になることがあります。

なぜ話を遮ってしまうのか
- 思い込み:「この人はいつも同じことを言うから」と最初から聞く耳を持たない。
- 多忙:話をじっくり聞いている時間がないという焦り。
- 誤解:認知症による訴えを、単なる「わがまま」だと誤って解釈してしまう。
特に認知症ケアにおいては、一見すると支離滅裂に聞こえる言葉の裏に、ご本人の切実な不安や痛み、要求が隠されていることが少なくありません。
その訴えは、単なるわがままではなく、BPSD(行動・心理症状)のサインかもしれないのです。
話を遮る行為は、利用者さんの「助けてほしい」という最後の望みを断ち切ることに等しいと、私は考えています。
【言動7】職員同士の私語やネガティブな会話
利用者さんがいるフロアやリビングで、職員同士が仕事とは関係のない私語に夢中になったり、他の職員や施設の悪口を言ったりするのは論外です。
これは、利用者さんから嫌われる以前に、社会人としてのモラルに反する行為です。

利用者に聞こえている悪口や愚痴
職員ステーションは舞台袖のようなものです。
一度フロアという舞台に上がったら、私たちはプロの役者でなければなりません。
利用者さんは、たとえ耳が遠かったとしても、職員の険悪な雰囲気やネガティブな空気感を敏感に察知します。
「あの人たちはいつもコソコソ話している」「自分のことを言われているのではないか」と、不安や不信感を抱かせてしまうのです。
施設全体への不信感の増大
このような職員の態度は、個人の問題に留まりません。
面会に来たご家族がそうした場面を目撃すれば、「この施設は職員教育がなっていない」「大切な家族を預けて大丈夫だろうか」と、施設全体への信頼を失うことになります。
一人の職員の軽率な言動が、同僚たちが真面目に築き上げてきた信頼を、一瞬で破壊してしまう可能性があることを肝に銘じるべきです。
利用者から嫌われる状況を解決する介護職員のための完璧対処法
ここまで、利用者さんから嫌われがちな職員の具体的な言動を7つ挙げてきました。
もし、「自分にも当てはまるかもしれない…」と感じたとしても、どうか自分を責めすぎないでください。
今、この文章を読んでいるあなたは、問題を解決しようと真剣に考えている、向上心のある素晴らしい介護職員です。
大切なのは、問題に気づき、改善しようと一歩を踏み出すことです。
ここからは、こじれてしまった関係を修復し、明日から楽な気持ちで働けるようになるための、具体的な対処法を5つご紹介します。

【対処法1】特定の職員が介護拒否される?まずは物理的・心理的に距離を置く
特定の利用者さんから、あからさまに介護拒否をされたり、暴言を吐かれたりする。
そんな辛い状況に陥ってしまったら、まずはその利用者さんから「距離を置く」ことを検討しましょう。
これは決して「逃げ」ではありません。
お互いが冷静になるための、極めて有効な戦略的クールダウンです。
「逃げるが勝ち」の戦略的意義
無理に関係を修復しようと焦って関われば関わるほど、相手の態度は硬化し、あなたのストレスも増大するばかりです。
一度こじれてしまった関係は、少し時間を置くことで、お互いに冷静さを取り戻し、客観的に状況を見つめ直すきっかけになります。
具体的な距離の置き方
まずは、上司やリーダーに「〇〇さんとの関係がうまくいかず、ケアに支障が出ている」と正直に相談しましょう。
そして、一時的に担当から外してもらうことをお願いしてみてください。
すぐに担当を代わってもらうのが難しい場合でも、関わりを挨拶や必要最低限の業務連絡に留めるだけでも、心理的な負担はかなり軽減されるはずです。
その間に、他の職員がどのようにその利用者さんと関わっているかを観察するのも、非常に良い学びになります。
【対処法2】どうしても「むかつく」…感情をコントロールする技術
綺麗ごとを言うつもりはありません。
理不尽な要求を繰り返されたり、人格を否定するような暴言を吐かれたりすれば、どんな聖人君子でも「むかつく」と感じるのは当然の感情です。
私も現役時代、思わず利用者にキレた…とまではいかなくとも、声を荒らげてしまった経験は一度や二度ではありません。
問題は、その怒りの感情に飲み込まれず、プロとしてどうコントロールしていくかです。

アンガーマネジメントの基本「6秒ルール」
怒りの感情のピークは、長くて6秒と言われています。
カッとなったら、まずはその場を離れるか、心の中で「1、2、3、4、5、6」とゆっくり数えてみてください。
これだけでも、衝動的な言動を抑えるのに大きな効果があります。
「これは認知症の症状(BPSD)だ」と、自分の感情を相手個人から切り離して、事象として捉えるのも有効なテクニックです。
自分の「怒りのクセ」を知る
自分がどんな時に、どんな言葉で、どんな態度を取られると怒りを感じやすいのかを、日頃から客観的に分析しておくことも大切です。
簡単なメモでも良いので、「いつ、どこで、誰に、何をされて、どう感じたか」を記録する(ジャーナリング)と、自分の感情のパターンが見えてきます。
自分の「怒りの地雷」が分かれば、それを事前に避けたり、踏んでしまった時の対処法を準備したりすることができるようになります。
【対処法3】嫌いな利用者への対応は「仕事」と割り切る思考法
「すべての利用者さんを平等に好きになりましょう」というのは、美しい理想論ですが、現実的ではありません。
人間ですから、どうしても性格が合わない、生理的に受け付けない、と感じる相手は存在します。
そんな時は、嫌いな利用者への対応を「プライベートな感情」から切り離し、「プロとしての仕事」と割り切る思考法が心を楽にしてくれます。

「無視」と「業務的対応」は全く違う
割り切るといっても、挨拶もしない、必要なケアも行わないといった「無視」は、職務放棄であり、虐待に繋がりかねない危険な行為です。
ここで言う「割り切る」とは、必要最低限のコミュニケーションは確保しつつ、それ以上の深い関わりは求めない、というスタンスです。
- 朝と帰りの挨拶は必ずする。
- ケアの内容や体調の変化に関する報告・連絡・相談はきちんと行う。
- 相手の目を見て、丁寧な言葉遣いを心がける。
こうした業務的な関わりを徹底するだけでも、あなたはプロとしての責任を果たしていることになります。
完璧を目指さない勇気
真面目な人ほど、「全員に好かれなければならない」「どんな利用者さんとも良好な関係を築かなければならない」と、自分を追い詰めてしまいがちです。
しかし、100点満点の関係を目指す必要はありません。
60点の「可もなく不可もない関係」を維持できれば、それで十分合格点だと考えましょう。
そのようにハードルを下げるだけで、心はずっと軽くなるはずです。
【対処法4】信頼される職員との違いは「ポジティブな言葉」と「短時間の関わり」
あなたの職場に、なぜか利用者さんから絶大な信頼を寄せられている職員はいませんか?
その職員と自分との違いはどこにあるのでしょうか。
特別な才能や技術があるように見えるかもしれませんが、実は、日々の些細な言動の積み重ねに、その秘訣が隠されています。

好かれる職員の「観察術」
もし可能であれば、その「好かれる職員」が、利用者さんとどのように関わっているかを少しだけ観察してみてください。
- どんな声かけをしていますか?(否定せず、まずは受け止める言葉を選んでいませんか?)
- どんな表情で話を聞いていますか?(笑顔で、相づちを打ちながら聞いていませんか?)
- 関わる時間は長いですか?(実は、長い時間べったりいるのではなく、短い時間でも質の高い関わりを繰り返していませんか?)
観察してみると、信頼される職員は、特別なことをしているわけではなく、基本的なコミュニケーションを、誰に対しても丁寧に、かつ継続して行っていることに気づくはずです。
まずは「真似」から始めてみる
違いが分かったら、まずは一つで良いので、その職員の言動を真似することから始めてみましょう。
例えば、
- 1日1回、利用者さんの良いところを見つけて具体的に褒める(「今日の洋服、色が素敵ですね」「お食事が進んでいますね、素晴らしいです」など)。
- 何かを頼まれたら、「はい、喜んで」と笑顔で返事をしてみる。
- ケアに入る前に、「〇〇さん、今からお手伝いしますね」と必ず一言添える。
こうしたポジティブな言葉と、短い時間でも相手に意識を向ける関わりを積み重ねていくことで、利用者さんのあなたに対する印象は、少しずつ変わっていくはずです。
【対処法5】どうしても辛いなら「環境を変える」という選択肢を持つ
ここまでにご紹介した対処法をすべて試してみても、状況が全く改善しない。
上司に相談しても真剣に取り合ってもらえず、むしろあなたの我慢が足りないと責められる。
利用者さんからの辛い対応によって、心身ともに疲れ果て、夜も眠れず、仕事に行くのが怖い…。
もしあなたがそんな極限状態にあるのなら、最後の、そして最強の対処法は「環境を変える」、すなわち転職することです。

転職は「逃げ」ではなく「自分を守る」ための前向きな選択肢
「ここで辞めたら負けだ」「自分に問題があるのに、どこへ行っても同じだ」などと、自分を責める必要は一切ありません。
あなたの心と体を壊してまで、しがみつかなければならない職場など、この世のどこにも存在しないのです。
介護施設と一言で言っても、その種類や文化は千差万別です。
私自身、特養、有料、サ高住、訪問と複数の職場を渡り歩いてきたからこそ断言できますが、職場環境が変われば、利用者さんの層も、求められるケアの質も、職員の人間関係も、すべてが変わります。
今の職場で合わないと感じているあなたも、別の施設では水を得た魚のように活躍できる可能性が十分にあります。
自分に合う場所は、必ずどこかにあるのです。
もし、利用者さんとの関係だけでなく、仕事全体のストレスで精神的に追い詰められていると感じたら、一人で抱え込まないでください。
厚生労働省が運営する「こころの耳」のような、働く人のメンタルヘルスをサポートする公的な情報サイトで、セルフケアの方法を学んだり、専門の相談窓口の情報を得たりすることも、自分を守るための大切な行動です。
自分を守るために戦略的に「場所を変える」という選択肢を、常に心の中に持っておいてください。
まとめ:利用者から嫌われる介護職員にならないために、大切なこと
「もしかしたら、自分は利用者から嫌われる介護職員なのではないか…」
そのように悩んでしまうのは、あなたが真摯に仕事と向き合っている何よりの証拠です。
今回は、多くの現場で見てきた無意識にやりがちな「7つの言動」と、具体的な「5つの対処法」について、私の経験を交えながら解説しました。
大切なのは、自分を責めることではなく、自分の言動が相手からどう見えている可能性があるのかを、客観的に知ることです。
その上で、完璧な人間関係を目指すのではなく、「これは仕事だ」と冷静に割り切る思考法や、信頼される同僚の良い点を素直に真似てみる姿勢が、あなたの心を楽にしてくれます。
まずは明日から、この記事でご紹介した対処法を、たった一つでも構いませんので試してみてください。
その小さな変化の積み重ねが、利用者さんとの関係を改善し、何よりもあなた自身の心の負担を軽くしてくれるはずです。
そして、もし本当に辛く、心が壊れそうになった時は、自分を守るために「環境を変える」という最強の選択肢があることを、どうか忘れないでください。
あなたの介護職としての毎日が、今日よりも少しでも穏やかなものになることを、心から願っています。
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