「親の介護は最後まで自分でするべきだ」
そんな責任感と優しさが、あなたを苦しめてはいませんか。
私は長年、介護現場で多くの高齢者と、そのご家族を見てきました。
現在は施設の事務職員として、入居相談に来られるご家族の涙や葛藤に日々向き合っています。
はっきり申し上げます。

親の介護を施設に任せることは、決して「親不孝」ではありません。
むしろ、お互いが笑顔で過ごすための、前向きな「親孝行」の一つなのです。
この記事では、現場を知る私の視点から、あなたが抱える罪悪感を解消し、後悔のない施設選びをするための具体的な道筋をお伝えします。
そろそろ、あなた自身の人生も大切にして良い頃合いではないでしょうか。
親の介護を施設に任せる罪悪感を乗り越える5つの視点
介護施設への入居を検討し始めたとき、多くの人の心に重くのしかかるのが「罪悪感」です。
育ててくれた親を、住み慣れた家から引き離してよいのか。
冷たい子供だと思われないか。
そんな思いが頭を巡り、夜も眠れなくなることがあるかもしれません。
しかし、現場に身を置く私から見れば、その罪悪感こそが、あなたがこれまで親御さんを大切に思ってきた証拠なのです。
ここでは、その苦しい胸の内を整理し、前を向くための視点を5つお話しします。
なぜ生まれる?「親の介護を施設に任せることへの罪悪感」の正体
まず、なぜこれほどまでに心が痛むのか、その正体を解き明かしてみましょう。
多くのご家族とお話ししていると、罪悪感の根底にあるのは「既成概念」と「約束」であることが分かります。
「親の面倒は子供が見るもの」という、日本社会に根強く残る価値観。

そして、「ずっと家にいていいからね」と、元気な頃に交わしてしまった何気ない約束。
これらが呪縛のようにあなたを縛り付けているのです。
私が特別養護老人ホームで働いていた頃、入居当日に玄関で泣き崩れる娘さんがいらっしゃいました。
「ごめんね、お母さん。約束を守れなくてごめんね」と謝り続ける姿を見て、私たちスタッフも胸が締め付けられる思いでした。
しかし、冷静に考えてみてください。
その約束をした当時と現在では、状況が全く異なっているはずです。
親御さんの身体状況、認知機能、そしてあなた自身の生活環境。
すべてが変化している中で、過去の約束だけに固執することは、誰の幸せにもつながりません。
また、周囲からの無責任な声も罪悪感を増幅させます。
親戚や近所の人からの「施設に入れるなんてかわいそう」という言葉。
介護の現実を知らない人たちの言葉に、耳を貸す必要はありません。
彼らは、深夜の徘徊に付き合い、下の世話をし、暴言を吐かれるあなたの辛さを代わってはくれないのです。
罪悪感の正体は、あなたの「愛情」と、現実とのギャップが生み出す心の悲鳴です。
施設に任せるという選択は、その悲鳴を無視することではありません。
プロの手を借りて、物理的な介護負担を手放すことで、精神的なつながりを守ろうとする賢明な判断なのです。
「冷たい人間だから施設に入れる」のではありません。
「大切だからこそ、安全で安心できる環境を用意する」のです。
この視点の転換こそが、罪悪感を手放すための第一歩となります。
「親を施設に入れる時の葛藤」と向き合い心を整理する
罪悪感の正体が分かっても、いざ決断しようとすると、激しい葛藤が襲ってきます。
「本当にこれでいいのか?」
「もう少し頑張れば、自宅で看られるのではないか?」
そんな迷いは、入居契約書にハンコを押すその瞬間まで続くものです。

事務員として多くの契約に立ち会ってきましたが、ペンを持つ手が震えているご家族を何度も見てきました。
この葛藤と向き合うためには、「プロに任せることの価値」を正しく理解する必要があります。
自宅での介護は、どうしても「生活の延長」になります。
安全管理、栄養管理、排泄介助、入浴介助。
これらを素人である家族が、24時間365日完璧に行うことは不可能です。
無理をすれば、褥瘡(床ずれ)を作ってしまったり、誤嚥性肺炎を見逃してしまったりするリスクも高まります。
一方、施設は「介護のプロ」が集まる場所です。
私たちスタッフは、高齢者の身体の仕組みや心理を学び、専門的な技術を持っています。
例えば、食事を飲み込む力が弱くなった方への介助方法一つとっても、誤嚥を防ぐための細かなテクニックがあります。
認知症の方への接し方にも、不安を取り除くための専門的なアプローチがあります。
私が有料老人ホームに勤務していた時、自宅では暴れて手がつけられなかった男性が入居されました。
ご家族は「施設でも迷惑をかけるのではないか」と心配されていました。
しかし、規則正しい生活リズムと、スタッフの適切な関わりによって、その方は驚くほど穏やかになられたのです。
面会に来た息子さんが、「親父、こんなに穏やかな顔をするんですね」と驚かれていたのが印象的でした。
家族だからこそ、感情がぶつかり合い、うまくいかないことがあります。
「なんでこんなこともできないの!」と怒鳴ってしまうこともあるでしょう。
そして、怒鳴ってしまった自分を責める。
その悪循環は、お互いの心を蝕んでいきます。
施設に任せることで、物理的な距離ができれば、心の余裕が生まれます。
余裕ができれば、面会の時に優しく接することができるようになります。
「介護職員」としての役割をプロに譲り、あなたは「息子・娘」という本来の役割に戻るのです。
それは決して「逃げ」ではなく、より良い関係を築くための「戦略的な撤退」と言えるでしょう。
葛藤するのは、あなたが真剣に親御さんのことを考えているからです。
その苦しみは、親御さんへの愛そのものです。
だからこそ、その愛を「共倒れ」ではなく、「共存」の形へと昇華させていく必要があるのです。
「親を介護施設に入れるタイミング」は限界が来る前が正解
では、具体的にいつ決断すべきなのでしょうか。
多くの人が、「これ以上はどうしても無理だ」という限界ギリギリまで頑張ってしまいます。
しかし、私の経験上、親を介護施設に入れる最適なタイミングは、「限界が来る少し前」です。
なぜなら、介護者が倒れてしまってからでは遅いからです。

あなたが過労やストレスで倒れたり、腰を痛めて動けなくなったりすれば、親御さんの生活も立ち行かなくなります。
いわゆる「共倒れ」という最悪のケースです。
こうなってから慌てて施設を探そうとしても、希望の条件に合う施設がすぐに見つかるとは限りません。
待機者が多い特別養護老人ホームであれば、数ヶ月から数年待つことも珍しくありません。
結果として、遠方の施設や、費用の高い施設を選ばざるを得なくなることもあります。
また、親御さん自身の適応能力という観点からも、早めの入居にはメリットがあります。
高齢になればなるほど、新しい環境に馴染むのには時間がかかります。
認知症が進行しきってから環境を変えると、混乱が強くなり、周辺症状(BPSD)が悪化することがあります。
まだある程度の理解力が残っているうちに、あるいは身体的には元気なうちに施設に入居することで、新しい生活リズムやスタッフ、他の入居者との関係を築きやすくなります。
「まだ早いかな?」と迷う時期こそが、実は検討を始めるベストなタイミングなのです。
具体的な判断基準として、以下のようなサインが出ていないか確認してみてください。
- 夜間の排泄介助で、あなたの睡眠時間が削られている。
- 仕事中に親のことが気になり、集中できなくなっている。
- 親に対してイライラし、手を上げそうになったことがある。
- 親の火の不始末や、徘徊のリスクが高まっている。
- 医師やケアマネジャーから「そろそろ施設を」と提案された。
特に、ケアマネジャーからの提案は重く受け止めるべきです。
彼らは多くの事例を見てきたプロであり、客観的に見て「在宅介護の限界」を感じ取っているからです。
「親がかわいそうだから」という感情論で先延ばしにすることは、結果的にリスクを高めます。
自宅で転倒して骨折し、そのまま寝たきりになってしまうケースも数多く見てきました。
施設にいれば、見守りの目があり、転倒リスクを減らす環境が整っています。
安全な環境に移ることは、親御さんの寿命を延ばし、QOL(生活の質)を維持することにもつながります。
「まだ頑張れる」は禁物です。
「まだ余裕があるうちに」動くことが、あなたと親御さん双方を守るための鉄則だと心得てください。
「親を施設に入れた後の後悔」を未然に防ぐための心構え
いざ施設に入居した後も、「本当にこれで良かったのか」と後悔の念に駆られることがあります。
「家にいた方が幸せだったのではないか」
「寂しい思いをさせているのではないか」
そんな後悔を未然に防ぐためには、入居後の関わり方が重要になります。

施設に入れたら終わり、ではありません。
そこから、新しい形での親子の関わりが始まるのです。
まず大切なのは、可能な範囲で面会に行くことです。
頻繁に行く必要はありませんが、顔を見せることで親御さんは安心し、あなた自身も親御さんの様子を確認できます。
ただし、コロナ禍などの感染症対策や、仕事の都合でなかなか行けないこともあるでしょう。
そんな時は、電話や手紙、あるいはオンライン面会などを活用してください。
「見捨てられたわけではない」と伝わることが何より大切です。
また、施設のスタッフとコミュニケーションをとることも、後悔を防ぐポイントです。
親御さんの好きな食べ物、趣味、過去の仕事の話などをスタッフに伝えておきましょう。
「父は昔、大工をしていたんです」という一言があるだけで、スタッフの話題作りになり、親御さんが施設での居場所を見つけるきっかけになります。
私が担当したある利用者様は、ご家族から「将棋が好き」と聞いていたおかげで、将棋好きの他の利用者様と仲良くなり、劇的に施設生活に馴染まれました。
このように、あなたしか知らない情報を伝えることで、間接的にケアに参加することができます。
そして何より、「施設は第二の我が家」と捉え直すことです。
施設は刑務所でも病院でもありません。
生活の場です。
レクリエーションがあり、季節の行事があり、同世代の仲間がいます。
自宅にこもりきりで、テレビばかり見て過ごすよりも、刺激があり、孤独を感じにくい環境であることも多いのです。
実際、入居当初は「帰りたい」と言っていた方が、数ヶ月後には「ここが一番気楽だ」と仰るケースは珍しくありません。
家族に気を使わず、プロのスタッフに甘えられる環境の方が、精神的に楽な場合もあるのです。
「捨てた」のではなく、「より豊かに過ごせる場所を提供した」と考えてください。
あなたが笑顔で「元気?」と会いに来てくれることが、親御さんにとっても一番の喜びです。
罪悪感で暗い顔をして面会に行くよりも、「お世話をお願いできて助かったよ、ありがとう」と笑顔を見せる方が、親御さんも安心して施設生活を送れるはずです。
「介護施設で家族がうざい」と思われない信頼関係の築き方
少しドキッとする見出しですが、これは非常に重要なポイントです。
ご家族が良かれと思ってとる行動が、時に施設スタッフとの関係を悪化させ、結果的に親御さんのケアにマイナスの影響を与えてしまうことがあります。
私たち施設側の人間も人間です。
「モンスターファミリー」と呼ばれるような理不尽な要求をするご家族に対しては、どうしても身構えてしまいます。

例えば、衣類の紛失や、小さな擦り傷一つで怒鳴り込んだり、夜中や早朝に頻繁に電話をかけてきたりする行為です。
もちろん、虐待や明らかな過失が疑われる場合は厳しく追求すべきですが、集団生活である以上、避けられないトラブルもあります。
他の入居者と衣類が混ざってしまうことや、転倒リスクを完全にゼロにすることは、どんなに体制を整えても難しいのが現実です。
私が経験した例では、食事の介助方法に細かすぎる注文をつける娘さんがいらっしゃいました。
「一口はこれくらいの量で」「スプーンの角度はこうして」と、毎回横で監視されるのです。
スタッフは萎縮してしまい、その利用者様のケアに入ることがプレッシャーになってしまいました。
結果、スタッフの笑顔が消え、事務的な対応にならざるを得なくなってしまったのです。
これでは本末転倒です。
施設スタッフと良好な関係を築くコツは、「感謝」と「敬意」を持つことです。
「いつもありがとうございます」「大変な仕事ですね」という一言があるだけで、スタッフのモチベーションは大きく上がります。
「このご家族のためにも、〇〇さんを大切にしよう」と自然と思えるようになるのです。
要望がある場合は、感情的に伝えるのではなく、「相談」という形で持ちかけるのがスマートです。
「最近、母の元気がなくて心配なのですが、何か様子が変わったことはありませんか?」
「以前、家ではこうすると食べてくれたのですが、試していただくことは可能でしょうか?」
このように、スタッフの専門性を尊重しつつ、一緒に解決策を探る姿勢を見せることが大切です。
私たち事務職も、スタッフがご家族から感謝の言葉をいただくと、本当に嬉しそうに報告に来るのを見ています。
信頼関係が構築できれば、スタッフは親御さんの些細な変化にも気づき、すぐにあなたに報告してくれるようになります。
「うざい家族」ではなく、「チームの一員」として施設と関わること。
それが、離れて暮らす親御さんを守るための、最強のセキュリティーになります。
失敗しない!親の介護を施設に任せる手順と説得の方法
気持ちの整理がついたら、次は具体的な行動に移る段階です。
しかし、親御さんが素直に「うん、分かった」と言ってくれるケースは稀です。
多くの方がここで壁にぶつかります。
また、施設の種類や費用、手続きの煩雑さに頭を抱える方も少なくありません。
ここでは、実務的な手順と、スムーズに事を運ぶための戦略を解説します。
事務職員としての知識をフル活用して、落とし穴にはまらないためのポイントをお伝えします。
「嫌がる親を施設に入れるには」どう説得すべきか
「家がいい」「施設なんて行きたくない」
親御さんが拒否するのは当然の反応です。
住み慣れた家を離れ、見知らぬ場所で集団生活を送ることに不安を感じない人はいません。
ここでやってはいけないのは、無理やり連れて行くことや、「もう面倒見きれないから!」と感情的に言い放つことです。

これは親御さんのプライドを傷つけ、頑なな態度を強めるだけです。
説得のポイントは、「親御さん自身のメリット」を強調することと、「子供のため」という視点を入れることです。
まず、真正面から「施設に入って」と言うのではなく、「体験入居(ショートステイ)」を提案してみましょう。
「数日だけ、リハビリに行ってみない?」「温泉があるみたいだよ」と、長期入居ではなく、一時的な利用であることを強調します。
実際に施設の雰囲気を肌で感じることで、「案外悪くないな」と思ってもらえる可能性があります。
私が勤務していたサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)でも、最初はショートステイから始まり、そこで友人ができてそのまま入居された方が何人もいらっしゃいました。
次に有効なのが、「子供の心配を解消するため」というアプローチです。
「お母さんが一人で家にいると、僕が心配で仕事が手につかないんだ」
「万が一倒れた時にすぐ駆けつけられないのが怖い」
と、あなたの弱音を見せるのです。
親というのは、自分のためには動かなくても、子供のためなら動いてくれるものです。
「子供に迷惑や心配をかけたくない」という親心を刺激するのです。
そして、第三者の力を借りることも非常に効果的です。
医師やケアマネジャーから、「今の身体の状態では、自宅での生活は危険です」「リハビリ施設で体力をつけましょう」と伝えてもらうのです。
家族の言うことには反発しても、「先生の言うこと」には素直に従う高齢者は多いものです。
事前に医師やケアマネジャーに相談し、口裏を合わせてもらう(役割分担をする)ことをお勧めします。
説得は一度で成功するものではありません。
時間をかけ、少しずつ外堀を埋めていくような根気強さが必要です。
「あなたを排除したいのではなく、安心して長生きしてほしいから」というメッセージを、言葉を変え、人を変えて伝え続けてください。
「認知症の親を施設に入れる方法」と成年後見制度の活用
親御さんが認知症で、判断能力が低下している場合、説得そのものが難しいケースがあります。
また、入居契約などの法律行為を自分で行うことができない場合もあります。
このような時に検討すべきなのが、「成年後見制度」です。
これは、認知症などで判断能力が不十分な方に代わって、法的に権限を与えられた「後見人」が契約や財産管理を行う制度です。
施設への入居契約は、本人との契約が原則です。

ご家族が代行して署名することも一般的ですが、厳密には本人の意思確認が必要です。
認知症が進み、意思確認が全くできない場合や、親族間で意見が対立している場合、施設側から成年後見人の選任を求められることがあります。
私が事務を担当していた時も、身寄りのない方や、ご家族が遠方で疎遠な方の場合、成年後見人(弁護士や司法書士など)と契約を結ぶことがありました。
この制度を利用すれば、ご家族が近くにいなくても、後見人が代理で入居手続きや費用の支払いを管理してくれます。
制度の詳しい仕組みや手続きの流れについては、法務省の公式サイトで解説されていますので、一度目を通しておくと安心です。法務省:成年後見制度について
ただし、成年後見制度にはデメリットもあります。
一度開始すると、原則として本人が亡くなるまで続きますし、専門職が後見人についた場合、毎月の報酬が発生します。
また、家族であっても親の財産を自由に使えなくなるという制約も生じます。
「親の預金から施設費用を支払おうと思ったら、凍結されていて下ろせない」というトラブルを防ぐためにも、早めの対策が必要です。
最近では「家族信託」という、より柔軟な財産管理の方法も注目されています。
いずれにせよ、認知症が進行してからでは選択肢が狭まります。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、地域包括支援センターや弁護士などの専門家に相談し、将来の財産管理や契約について話し合っておくことが重要です。
施設入居に関しては、本人の拒否が強くても、生命の危険がある場合などは、医師の診断のもと、ご家族の同意で入居を進めることもあります。
これは非常にデリケートな問題ですので、独断で進めず、必ずケアマネジャーや医療機関と連携して進めてください。
施設の種類と費用相場を知りメリットとデメリットを比較する
「施設」と一口に言っても、様々な種類があり、費用もサービス内容も大きく異なります。
ここを間違えると、「思っていたのと違う」「支払いが続かない」という事態になりかねません。
代表的な4つの施設形態について、現場経験を踏まえて解説します。

1. 特別養護老人ホーム(特養)
- 特徴: 公的な施設で、要介護3以上が入居対象。「終の棲家」として看取りまで対応することが多い。
- メリット: 費用が安い(月額5〜15万円程度)。所得に応じた減免制度がある。
- デメリット: 入居待ちが多い。多床室(相部屋)の場合がある。医療体制は日中のみが基本。
- 向いている人: 費用を抑えたい人。要介護度が高く、常時介護が必要な人。
2. 介護老人保健施設(老健)
- 特徴: 病院と自宅の中間施設。リハビリをして在宅復帰を目指すのが目的。原則として3〜6ヶ月程度の期間限定。
- メリット: リハビリ専門職(PT/OT)がいる。医療ケアが充実している。費用は比較的安い。
- デメリット: ずっとはいられない(退去を求められる)。レクリエーションなどは少なめ。
- 向いている人: 退院直後でリハビリが必要な人。特養の空き待ち期間のつなぎとして利用したい人。
3. 有料老人ホーム(介護付)
- 特徴: 民間企業が運営。サービスや設備が充実している。
- メリット: 待機期間が短い。レクリエーションや食事が豪華。24時間看護師常駐のところもある。
- デメリット: 費用が高い(月額15〜30万円以上、入居一時金が必要な場合も)。施設ごとの差が大きい。
- 向いている人: 快適な生活環境を求める人。ある程度の予算がある人。すぐに入居したい人。
4. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- 特徴: バリアフリー対応の賃貸住宅。安否確認と生活相談がついている。
- メリット: 自由度が高い。外出や外泊が自由。夫婦で入居できる部屋もある。
- デメリット: 重度の介護が必要になると住み続けるのが難しい場合がある。介護サービスは外部の事業所を使うため、使う分だけ費用がかかる。
- 向いている人: 自立〜軽度の介護度で、自由な生活を維持したい人。
このように、親御さんの身体状況と予算に合わせて選ぶ必要があります。
私が相談を受ける際によくある失敗は、「安さ」だけで特養を選び、何年も待っている間に自宅介護が破綻するケースです。
まずは有料老人ホームに入って生活を安定させ、特養の空きを待つという選択肢も検討すべきです。
ケアマネジャーへの相談から入居までの具体的な流れ
施設探しは、情報収集から始まります。
まずは、担当のケアマネジャーに「施設入居を考えている」と相談してください。
彼らは地域の施設情報を持っていますし、親御さんの状態に合った施設を提案してくれます。

まだ要介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センター(役所の窓口)へ相談に行きましょう。
具体的な流れは以下の通りです。
- 相談・情報収集: ケアマネジャーや紹介センターに相談。インターネットやパンフレットで候補を絞る。
- 見学: 必ず複数の施設を見学する。ここが一番重要です。
- 申し込み: 気に入った施設に診療情報提供書(医師の診断書)などを提出して申し込む。
- 面談: 施設の相談員やケアマネジャーが、本人・家族と面談し、入居の可否を判定する。
- 契約・入居: 契約書を交わし、引っ越しをする。
見学の際は、建物の綺麗さだけでなく、「匂い」と「音」と「スタッフ」に注目してください。
排泄物の匂いが染み付いていないか。
スタッフの怒鳴り声や、ナースコールの鳴り止まない音が聞こえないか。
そして、すれ違うスタッフが挨拶をしてくれるか、入居者の表情は明るいか。
これらは、パンフレットには載っていない「リアルな現場の質」を表しています。
事務職の私だから言えますが、玄関がピカピカでも、奥の居室エリアが荒れている施設もあります。
可能であれば、昼食の時間帯に見学に行き、食事の雰囲気を見ることをお勧めします。
食事介助の様子を見れば、スタッフの余裕やケアの丁寧さが一目瞭然だからです。
世帯分離や負担限度額認定証を活用して経済的負担を減らす
最後に、切実な「お金」の問題についてです。
施設費用が払えるか不安で、入居をためらう方は多いです。
しかし、日本の介護保険制度には、低所得者向けの負担軽減策が用意されています。
これらを賢く利用することで、費用を大幅に抑えられる可能性があります。
まず知っておくべきは「介護保険負担限度額認定証」です。

これは、特養や老健などの介護保険施設に入居する場合、所得や預貯金額が一定以下であれば、食費と居住費(部屋代)が軽減される制度です。
例えば、市民税非課税世帯であれば、月額数万円単位で安くなることがあります。
そして、この制度を利用するために有効なテクニックが「世帯分離」です。
親と子が同居していて住民票が一緒の場合、世帯全体の収入で判断されるため、子供に収入があると軽減措置が受けられないことがあります。
そこで、親と子の住所が同じままであっても、住民票上で世帯を分ける(世帯分離をする)ことで、親御さん単独の世帯として扱われ、非課税世帯の要件を満たすことができる場合があります。
また、「高額介護サービス費」という制度もあります。
これは、1ヶ月の介護サービス利用料の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
これも所得によって上限額が変わるため、世帯分離の効果が期待できます。
ただし、世帯分離には国民健康保険料への影響など、デメリットが発生する場合もあります。
また、有料老人ホームなどの民間施設では、負担限度額認定証は使えません。
これらの制度は複雑で、自治体によって運用が異なる部分もあります。
自己判断せず、役所の介護保険課や、施設の生活相談員、ケアマネジャーに「費用を抑える方法はないか」と率直に相談してください。
私たち事務職員は、こうした制度の手続きに精通しています。
「お金がないから無理」と諦める前に、プロの知恵を借りてください。
親御さんの年金の範囲内で入居できる施設を探すことも、私たちの重要な仕事の一つなのです。
親の介護を施設に任せることは、決して悲しい結末ではありません。
それは、あなたと親御さんが、それぞれの人生を取り戻し、穏やかに過ごすための「新しいスタート」なのです。
罪悪感を捨て、正しい知識と準備を持って、その一歩を踏み出してください。
まとめ:「親の介護を施設に任せる」ことは、家族を守る愛ある選択です
親の介護を施設に任せることは、決して「親捨て」でも「逃げ」でもありません。
この記事を通して繰り返しお伝えしてきましたが、それはお互いが共倒れせず、笑顔で残りの時間を過ごすための「前向きな親孝行」であり、勇気ある愛の決断です。
「約束を守れなかった」「冷たい子供だ」という罪悪感は、あなたがこれまで懸命に親御さんと向き合い、大切に思ってきた証拠に他なりません。
しかし、その責任感だけで無理をして自宅介護を続け、あなた自身が心身ともに限界を迎えてしまっては元も子もありません。
プロの手を借り、物理的な介護負担を手放すことで、あなたは「介護要員」から「愛する子供」という本来の立場に戻ることができます。
心の余裕を持って面会に行き、優しく手を握り、穏やかに言葉を交わす時間こそが、今、本当に必要な親孝行なのではないでしょうか。
大切なのは、完全に限界が来てから動くのではなく、まだ少し余裕があるうちに動き出すことです。
まずは担当のケアマネジャーに今の辛さを正直に話し、実際に施設を見学することから始めてみてください。
私たち施設スタッフも、ご家族が疲弊するのではなく、笑顔で面会に来てくださることを何より願っています。
「施設に任せる」という選択が、あなたと親御さんの双方にとって、苦しみから解放され、より人間らしく安らかな生活を送るための第一歩となることを、心から応援しています。
どうぞ、もう自分を責めないで、ご自身の人生も大切になさってください。



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