介護職として日々頑張っているのに、なぜか利用者さんとの距離が縮まらない。
むしろ、避けられているような気さえする…。
そんな風に感じたことはありませんか。

実は、介護職として利用者に好かれる人には、学歴やセンスとは関係のない、いくつかの明確な共通点があります。
この記事では、私が10年以上の現場経験と、現在施設運営を裏から支える事務職としての客観的な視点を基に、その「決定的な違い」を徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、明日から利用者さんとの関わり方が変わり、あなた自身の働きやすさにも繋がる具体的なヒントが手に入っているはずです。
介護職で利用者に好かれる人の5つの共通点
多くの介護現場で様々な職員を見てきましたが、利用者に自然と好かれる介護職には、やはり明確な共通点が存在します。
結論から言いますと、それは小手先のテクニックではなく、「相手を一人の人間として尊重する姿勢」が行動の根底にあるかどうかです。
ここでは、私の10年以上の経験から導き出した、誰でも意識すれば実践できる本質的な5つのポイントを具体的に解説していきます。

まずはお年寄りに好かれる人の「聴く姿勢」という特徴から
最も重要と言っても過言ではないのが、この「聴く姿勢」です。
ただ話を聞く「聞く」ではなく、相手の心に寄り添う「聴く」ことが、信頼関係の第一歩となります。
相手の話を遮らず、最後まで受け止める
好かれる人は、相手が話し終わるまで、決して言葉を遮りません。
たとえ話が長くなったり、同じ話を繰り返されたりしても、穏やかな表情で最後まで耳を傾けます。
これは「あなたの話には価値がありますよ」という、何よりのメッセージになります。
私が特別養護老人ホームで働いていた頃、非常に多忙で、つい効率を重視して「はい、はい、それでですね」と話を急かしてしまうことがありました。
しかし、本当に利用者さんから信頼されている先輩職員は、ほんの数分の立ち話でも、必ず相手の目を見て、体を向け、話が終わるまでじっと待っていました。
その短い時間の質が、信頼の差を生んでいたのです。
言葉にならない思いを汲み取る
高齢になると、病気や障害によって、思っていることをうまく言葉にできない方も多くいらっしゃいます。
好かれる介護職は、そうした言葉にならない表情の変化、声のトーン、視線の動きなどから、相手の本当の気持ちを汲み取ろうと努めます。
「何か言いたそうだな」「もしかして、こう感じているのかな?」と、相手の立場に立って想像力を働かせることができるのです。
お年寄りに好かれるのは女性だけ?性別を超えた共通点
「介護の仕事では、物腰の柔らかい女性の方が好かれやすいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
確かにそういう一面もありますが、本質はそこではありません。
性別に関係なく、利用者に好かれる人には共通する特徴があります。

清潔感がもたらす安心感
これは男女問わず、絶対的な基本です。
ヨレヨレの制服、伸びっぱなしの髪や髭、きつい香水の匂いなどは、相手に不快感や不安を与えます。
介護は、利用者さんの身体に触れる機会も多い、非常にパーソナルな仕事です。
だからこそ、職員の清潔感は、そのままケアの質に対する信頼感に直結します。
現場では「あの男性職員さんは、まるで娘みたいに気配りができて優しい」なんて声が聞かれることもありますが、それは性別を超えて、その人の持つ丁寧さや清潔感が評価されている証拠なのです。
穏やかで安定した口調
性別に関わらず、好かれる人は一様に話し方が穏やかです。
早口でまくしたてたり、大きな声で威圧したりすることはありません。
特に高齢の方は、聴力が低下していることも多いため、低めのトーンで、はっきりと、少しゆっくり話すことを心がけるだけで、相手の安心感は格段に増します。
利用者が職員を好きになるのは、安心感を与えられるから
利用者さんが介護職員に求めるものの根底には、「安心したい」という気持ちがあります。
住み慣れた自宅を離れ、心身に不安を抱える中で、職員の存在は大きな支えです。
その「安心感」は、いったい何から生まれるのでしょうか。

いつも「同じ」であることの価値
好かれる職員は、感情の波が少なく、いつ接しても態度が安定しています。
機嫌が良い日と悪い日で、利用者への接し方が変わるようなことはありません。
この「いつも通り」という予測可能性が、利用者さんにとっては非常に大きな安心材料となります。
私が以前勤めていた有料老人ホームでは、お客様意識の高い利用者さんも多く、職員の些細な態度の変化にも敏感でした。
日によって挨拶を返したり返さなかったりする職員は、やはり信頼を失いがちでした。
逆に、いつも穏やかで変わらない態度の職員の周りには、自然と人が集まり、フロア全体の雰囲気も和やかになっていたのが印象的ですT。
確かな介護技術に裏打ちされた自信
もちろん、精神的な安定だけでなく、介護技術そのものが安心感に繋がることも忘れてはなりません。
移乗介助の際にグラグラしたり、手順がおぼつかなかったりすると、利用者さんは「この人に任せて大丈夫だろうか」と身体的な恐怖を感じてしまいます。
一つひとつのケアを、自信を持って、かつ丁寧に行うこと。
その確かな技術こそが、言葉以上の説得力を持って相手に安心感を与えるのです。
心地よい距離感を保つ、介護における上手な利用者との関わり方
親しくなることと、馴れ馴れしくなることは全く違います。
利用者に好かれる介護職は、この「心地よい距離感」を保つのが非常に上手です。

相手の領域に踏み込みすぎない
利用者さんのプライバシーに過度に干渉したり、家族やお金の話などを根掘り葉掘り聞いたりするのはNGです。
私たちは友人ではなく、あくまで「介護のプロ」として関わっています。
相手が話したくないと感じている領域には、踏み込まない配慮が必要です。
特に訪問介護のように1対1の関係性が深くなりやすい現場では、この距離感が非常に重要になります。
利用者さんとの関係が近くなりすぎた結果、契約外のサービスを頼まれる「何でも屋」になってしまい、疲弊してしまう職員を何人も見てきました。
施設であっても、特定の職員にだけ個人的な悩みを打ち明けたり、過度な要求をしたりする「依存関係」が生まれると、その職員が休みの日に不穏になるなど、ケア全体に支障をきたすことがあります。
良好な関係を長く続けるためにも、プロとしての節度を保つことが、結果的に利用者さんのためにもなるのです。
敬意を込めた言葉遣い
相手は人生の大先輩です。
たとえ認知症があっても、親しみを込めたつもりでも、タメ口や子ども扱いは相手の尊厳を傷つけます。
基本は丁寧語を使い、相手を尊重する姿勢を言葉で示すことが大切です。
「〇〇さん」と敬称をつけ、穏やかな言葉遣いを徹底するだけで、相手に与える印象は大きく変わります。
お年寄りに好かれるのはスピリチュアルではなく、非言語的コミュニケーション
「あの人は特別なオーラがあるから」「なぜか懐かれる体質なんだよね」と言う人がいますが、私はそれをスピリチュアルな話だとは思いません。
よく観察してみると、そうした人々は例外なく、非言語コミュニケーション、つまり言葉以外の方法で相手に好意や安心感を伝える達人なのです。

笑顔は最強のコミュニケーションツール
基本中の基本ですが、笑顔の効果は絶大です。
真顔で機械的に作業をこなすのではなく、ケアの合間ににこやかに声をかけるだけで、場の空気は和み、利用者さんも心を開きやすくなります。
口角を少し上げるだけでも、表情は全く違って見えます。
忙しい時ほど、意識して笑顔を作ることが、良好な関係を築くコツです。
視線と動作が伝えるメッセージ
相手の目を見て話す、ゆっくりとした丁寧な動作を心がける、といったことも非常に重要です。
忙しいからといって、あちこち見ながら早口で話したり、バタバタと大きな音を立てて歩き回ったりすると、相手は「自分はぞんざいに扱われている」と感じてしまいます。
相手に体を向け、視線を合わせ、一つひとつの動作を丁寧に行う。
こうした非言語的なメッセージの積み重ねが、「この人は信頼できる」という感覚に繋がっていくのです。
これは特別な能力ではなく、意識すれば誰にでもできる、極めて再現性の高い技術なのです。
利用者に好かれる介護職が絶対にしない、嫌われる人のNG行動
さて、ここまでは「好かれる人」の特徴を見てきました。
視点を変えて、今度は「嫌われる人がやりがちなNG行動」を反面教師として学ぶことで、より深く、好かれる介護職への道を理解していきましょう。
良い点を真似るのが加点法だとすれば、悪い点を避けるのは、信頼を失わないための絶対に必要なスキルです。
利用者に好かれる介護職は、これから挙げるような行動を”絶対に”しません。

利用者から嫌われる介護職員が口にする「でも」「だって」
利用者さんから何かを訴えられたり、意見を言われたりした時に、会話の頭に「でも」「だって」「しかし」といった否定的な言葉をつけてしまう職員がいます。
相手を無意識に否定してしまう癖
本人に悪気はないのかもしれません。
ただ、自分の考えや状況を説明したいだけなのでしょう。
しかし、否定語から会話を始められると、言われた側は「自分の話を頭から否定された」「この人に話しても無駄だ」と感じてしまいます。
これを繰り返していると、利用者さんは次第に心を閉ざし、何も話してくれなくなってしまいます。
介護現場では、この「でもだって星人」が時々出現しますが、彼らがいるとフロアのコミュニケーションは確実に停滞します。
まずは「受け止める」一言から
では、どうすれば良いのでしょうか。
答えはシンプルで、まずは「そうなんですね」「〇〇と感じていらっしゃるのですね」と、相手の言葉を一度、そのまま受け止めることです。
このワンクッションを置くだけで、相手は「話を聞いてもらえた」と感じ、その後のこちらの説明も、素直に耳を傾けてくれる可能性が高まります。
いわゆる「イエス・アンド法」を意識し、相手の意見を受け止めた上で、「では、こうするのはいかがでしょう?」と提案する形が理想です。
良かれと思ってが逆効果に?利用者さんの自立を妨げる行動
親切心や効率を優先するあまり、利用者さんの「できること」まで奪ってしまうのは、最も避けたいNG行動の一つです。

「おせっかい」が奪うもの
介護の本来の目的は、あくまで「自立支援」です。
時間がかかるからといって、自分で服を着られる人の着替えを手伝ってしまったり、まだ歩けるのにすぐに車椅子に乗せてしまったり…。
こうした「良かれと思って」の行動は、利用者さんの残存能力を奪い、生活への意欲を削ぎ、「自分はもう何もできないんだ」という無力感を植え付けてしまう可能性があります。
私が特養にいた頃、早く業務を終わらせたい一心で、自分で食べられる方の食事介助までしてしまう職員がいました。
確かにその方が時間は短縮できます。
しかし、それは介護ではなく、単なる「作業」にすぎません。
利用者さんから「できる喜び」や「役割」を奪う行為は、その人の尊厳を深く傷つけるということを、私たちは決して忘れてはなりません。
「待つ」ことも重要なスキル
自立支援で最も大切なのは、「見守ること」そして「待つこと」です。
時間がかかっても、失敗しそうでも、すぐには手を出さず、本人の力でやり遂げられるように励ましたり、ヒントを与えたりする。
この「待つ」という行為は、実は積極的に手を出すことよりも、忍耐力と観察力が求められる高度な介護技術なのです。
特定の利用者への「えこひいき」と、それが生む職員への依存
人間ですから、どうしても「話しやすい人」「気の合う人」はいるでしょう。
しかし、それを露骨な「えこひいき」として行動に移してしまうと、職場全体に深刻な悪影響を及ぼします。

えこひいきがもたらす3つの弊害
特定の利用者だけを優遇する行為は、少なくとも3つの問題を引き起こします。
- 他の利用者からの不満: 「なぜあの人だけ特別扱いなの?」という不公平感が、フロア全体の不満や嫉妬に繋がります。
- 職員間の不和: 「〇〇さんは、Aさんの対応ばかりしている」といった不満が、職員同士の関係性を悪化させます。
- 対象者の過度な依存: 特別扱いされた利用者さんは、その職員に過度に依存するようになり、他の職員の言うことを聞かなくなったり、その職員がいないと不安定になったりします。
私が勤めていた有料老人ホームで、ある職員がお気に入りの利用者さんの部屋ばかりを訪れ、長時間おしゃべりをするということがありました。
結果、他の利用者さんから「私たちのコールにはなかなか来ないのに」とクレームが殺到し、その職員は他のスタッフからも孤立してしまいました。
えこひいきは、誰のためにもならないのです。
公平性を保つための心構え
大切なのは、全ての利用者さんに対して、プロとして公平に接するという意識を持つことです。
もし特定の利用者さんに依存されそうになったら、「私は皆さんを担当していますから」とやんわり伝えたり、他の職員に対応を代わってもらったりして、一人の職員に負担が集中しないようにチームで対応することが重要です。
馴れ合いはNG!利用者と職員のあるべき関係性とは?
利用者さんとの距離が近くなること自体は、悪いことではありません。
しかし、プロとしてのけじめを失った「馴れ合い」の関係は、多くのトラブルの原因となります。

その言葉遣い、本当に適切ですか?
親しくなったからといって、タメ口で話したり、相手をあだ名で呼んだりするのは、プロの態度として不適切です。
利用者さんは、友人や家族ではなく、私たちのケアを受ける「お客様」であり、人生の大先輩です。
敬意を欠いた言葉遣いは、相手の尊厳を傷つけ、周囲の利用者さんやご家族にも不信感を与えます。
現場で、利用者さんを下の名前で呼び捨てにするようなベテラン職員を見かけることがあるかもしれません。
しかし、それは長年の信頼関係という「結果」の上に成り立っている特殊な例であって、経験の浅い職員が安易に真似していい「原因」ではありません。
その順番を間違えると、あなたはただの失礼な人になってしまいます。
プライベートと仕事の境界線を引く
利用者さんに自分の個人的な悩み(恋人とのこと、家族の愚痴など)を話すのも厳禁です。
あなたは仕事としてそこにいますが、利用者さんは生活の場で暮らしています。
職員のプライベートな悩みを聞かされるのは、利用者さんにとって大きなストレスになりかねません。
仕事とプライベートの境界線をしっかりと引くことが、プロとしての責任です。
こうしたプロとしての心構えは、個人の感覚だけでなく、公益社団法人 日本介護福祉士会が定める倫理綱領においても、利用者との適切な関係性を保つための重要な指針として示されています。
一度、専門職としての行動規範に目を通しておくことも、自身の立ち位置を再確認する上で非常に役立つでしょう。
仕事ができないと思われる人の、利用者への話し方と態度
利用者さんから「この人は仕事ができないな」「頼りないな」と思われてしまうと、そこから信頼関係を築くのは非常に困難になります。
そう思われてしまう人には、話し方や態度に共通する特徴があります。

自信のなさが透けて見える言動
- 声が小さい、語尾を濁す: 「〇〇しておきますね…たぶん…」といった自信のない話し方は、相手を不安にさせます。
- 視線が合わない: 目を見て話さないと、「何か隠しているのか」「やましいことがあるのか」と不信感を持たれます。
- 質問に即答できない: 利用者さんからの質問に「さあ…」「分かりません」と答えてばかりいると、専門性を疑われます。分からない場合は、「確認して、後ほど必ずご報告します」と誠実に対応することが大切です。
「忙しいオーラ」を振りまく
- ため息をつく: 利用者さんの前で大きなため息をつくのは、「あなたのせいで忙しい」という無言の圧力になります。
- 足音がうるさい、動きが雑: 常にバタバタと走り回ったり、物を置く音が乱暴だったりすると、フロア全体に緊張感が走り、利用者さんは声をかけづらくなります。
私が事務方として現場全体を見ていると、職員の足音やドアの開閉音で、その人の心理状態や仕事への姿勢が驚くほどよく分かります。
落ち着いて丁寧な仕事をする職員の周りは、やはり穏やかな空気が流れているものです。
まとめ:介護職で利用者に好かれる人は、日々の小さな積み重ねを大切にする
今回は、介護職で利用者に好かれる人と、残念ながら嫌われてしまう人の決定的な違いについて、私の経験を基に解説してきました。
改めてポイントを整理しましょう。
【利用者に好かれる人の特徴】
- 相手の話を遮らず、最後まで「聴く」姿勢がある
- 性別に関係なく、清潔感と穏やかな口調を保っている
- 感情が安定しており、「いつも通り」という安心感を与えられる
- 馴れ馴れしくならず、プロとしての心地よい距離感を保てる
- 笑顔や丁寧な動作といった非言語コミュニケーションを大切にしている
【嫌われる人のNG行動】
- 「でも」「だって」と、相手を否定する言葉から会話を始める
- 良かれと思い、相手のできることまで奪ってしまう
- 特定の利用者だけを優遇する「えこひいき」をする
- タメ口など、プロの節度を越えた馴れ合いの関係になる
- 自信のない態度や、「忙しいオーラ」で相手を不安にさせる
結局のところ、利用者さんとの関係は、あなた自身の仕事を映す鏡のようなものです。
小手先のテクニックに走るのではなく、まずは目の前の利用者さん一人ひとりを、人生の先輩として尊重する。
その気持ちがあれば、あなたの行動は自然と変わり、言葉遣いや態度にも表れてくるはずです。
もし今、利用者さんとの関係に悩んでいるなら、明日からたった一つでいいので、今回ご紹介したことを実践してみてください。
例えば、「利用者さん一人との会話で、5分間だけ相手の話を遮らずに、相槌を打ちながら聴ききる」ということから始めてみてはいかがでしょうか。
その小さな積み重ねが、やがて大きな信頼に繋がり、あなたの介護という仕事を、より楽しく、やりがいのあるものに変えてくれるはずです。
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