「オープニングスタッフ募集!」という求人、なんだかワクワクしますよね。
まっさらな職場で、人間関係もイチからスタートできる。
そんな魅力に惹かれる一方で、「介護のオープニングスタッフはすぐ辞める人が多い」という、少し気になる噂を耳にしたことはありませんか?

新しい環境への期待と、その裏にあるかもしれない厳しい現実。
この記事では、長年さまざまな介護現場を見てきた私が、その噂の真相と、オープニングスタッフとして後悔しないための具体的なコツを、経験に基づいて冷静に解説していきます。
あなたのその不安、この記事を読み終える頃には、確かな知識と自信に変わっているはずです。
なぜ介護施設のオープニングスタッフはすぐ辞める?噂の真相と5つの理由
新しい施設の立ち上げに関わるというのは、聞こえは良いかもしれません。
しかし、多くの介護職が「もう二度とオープニングはやりたくない」と口にするのも、また事実です。
私自身、これまで複数の施設形態で働いてきましたが、オープニング特有の華やかさと、その裏側にある混乱の両方を目の当たりにしてきました。
まずは、なぜ「介護のオープニングスタッフはすぐ辞める」と言われてしまうのか、その根本的な理由から深く掘り下げていきましょう。

介護施設のオープニングスタッフが辞めてしまう、ありがちな理由とは?
介護施設のオープニングスタッフが早期に離職してしまう背景には、いくつかの共通した理由が存在します。
これらは単独で発生するというよりも、複数の問題が複雑に絡み合って、スタッフの心身を疲弊させていくのです。
大別すると、「人間関係」「業務の混乱」「理想と現実のギャップ」の3つが、大きな原因と言えるでしょう。
これから、これらのありがちな理由を一つひとつ具体的に見ていきます。
あなたがもしオープニングの求人に魅力を感じているなら、まずはその光だけでなく、影の部分もしっかりと知っておくことが重要です。
聞いていた話と違う…理想と現実のギャップが生む人間関係のきつさ
オープニングスタッフの求人で最も魅力的に映るのは、「人間関係がフラット」という言葉ではないでしょうか。
しかし、現実はそう甘くはありません。
まっさらな状態だからこそ、人間関係の「きつさ」が生まれやすいという皮肉な側面があるのです。

「みんなで一緒に」の幻想と派閥の形成
最初は「みんなで良い施設を作ろう!」と意気投合していても、バックグラウンドが異なる職員が集まれば、必ず介護観や仕事の進め方に違いが出てきます。
私が以前経験した有料老人ホームの立ち上げでは、まさにこの典型でした。
ベテラン職員は経験則を重視し、若い職員は新しいやり方を試したい。
最初は小さな意見の食い違いだったものが、次第に「あの人とはやりにくい」という感情的な対立に発展し、気づけばいくつかの派閥が形成されていました。
「みんなで」という理想が高かった分、それが崩れた時の失望感は大きく、人間関係に疲れて辞めていく人が後を絶ちませんでした。
リーダー不在による混乱と責任のなすりつけ合い
立ち上げ期は、明確なリーダーシップを発揮できる管理者がいるかどうかが、施設の運命を大きく左右します。
しかし、残念ながら管理者自身も新しい環境で手探りの状態であることが少なくありません。
その結果、誰が最終的な判断を下すのかが曖昧になり、現場は混乱します。
何か問題が起きた時、「誰の指示だったのか」「自分は聞いていない」といった責任のなすりつけ合いが始まるのです。
これではチームとして機能するはずもなく、職員間の不信感は募る一方です。
既存施設からの「応援」スタッフとの確執
運営母体がしっかりしている法人の場合、オープン時には系列の既存施設から経験豊富なスタッフが「応援」として派遣されることがあります。
一見すると心強い存在ですが、これが新たな火種になることも少なくありません。
応援スタッフが自施設のやり方を「正解」として押し付けてしまい、新しく入ったオープニングスタッフが意見を言えなくなる。
あるいは、オープニングスタッフ側が「自分たちの施設なのに」と反発し、両者の間に見えない壁ができてしまうのです。
本来は橋渡し役であるべき存在が、かえって人間関係を複雑にしてしまうケースは、決して珍しくありません。
なぜ「介護施設のオープニングスタッフはやめとけ」とまで言われるのか?
経験者の間では、半ば冗談のように「介護のオープニングスタッフはやめとけ」という言葉が交わされることがあります。
これは単なるイメージだけでなく、実際に体験した者だからこそ分かる、深刻な負担が背景にあるからです。

精神的な負担の大きさ
オープニングスタッフの仕事は、単にご利用者のお世話をするだけではありません。
何もない状態から、業務マニュアル、ケアプランの書式、緊急時対応のフローまで、あらゆるものを自分たちで作り上げていかなければなりません。
毎日が試行錯誤の連続であり、「これで本当に合っているのか?」という不安が常につきまといます。
ご利用者の安全を守らなければならないという介護職本来のプレッシャーに加え、定まらない業務へのストレスが重くのしかかるのです。
この終わりの見えない状況は、想像以上に精神をすり減らします。
割に合わないと感じる労働環境
「オープニングだから仕方ない」という魔法の言葉のもと、サービス残業や休日出勤が常態化しやすいのも特徴です。
オープン準備に追われ、オープン後も次々に入居されるご利用者の対応に追われ、気づけば心も体も休まる時がない。
それにもかかわらず、給与は他の施設と変わらないか、特別な手当が付かない場合がほとんどです。
「これだけ大変な思いをしているのに、見返りが少ない」と感じてしまうのも無理はありません。
その不満が、離職の引き金となるのです。
実際のところ、介護施設のオープニングスタッフの離職率は高いの?
「オープニングスタッフの離職率」という、公式で正確な統計データを見つけることは困難です。
しかし、介護業界全体の離職率のデータと、これまで述べてきたオープニング特有の退職要因を考え合わせると、その傾向は見えてきます。

介護労働安定センターの調査によれば、介護業界全体の離職率は依然として他の産業に比べて高い水準にあります。
ここに、オープニング施設特有の「人間関係の構築の難しさ」「業務の未整備」「過重労働」といった要因が上乗せされるのですから、体感として離職率が高くなる傾向にある、と考えるのが自然でしょう。
私が事務職として見てきた中でも、開設から1年以内に、初期メンバーの3分の1から半分近くが入れ替わってしまう施設は、残念ながら少なくありませんでした。
ルールも何もない!介護のオープニングスタッフはなぜこれほど大変?
オープニングスタッフが直面する「大変さ」は、既存の施設で働くのとは質が異なります。
それは、仕事の基盤となる「当たり前」が何一つ存在しない環境に飛び込むからです。

備品一つ探すのも一苦労
これは経験した人にしか分からないかもしれませんが、本当に些細なことから大変です。
「爪切りはどこにしまった?」「このご利用者用の車椅子はどれだっけ?」「マニュアルはどこにあるんだっけ…あ、まだ無いんだった」
既存の施設なら無意識にできていることが、オープニングでは全て「確認」「相談」「決定」のプロセスを経なければなりません。
この小さなストレスの積み重ねが、日々の業務を重くしていくのです。
業務フローが確立されるまでのカオス
申し送りの方法一つとっても、口頭で済ませるのか、記録ソフトを使うのか、ホワイトボードに書くのか、決まっていません。
夜間の巡視頻度、入浴介助の手順、委員会活動の進め方など、ありとあらゆる業務フローを、日々の業務と並行して構築していく必要があります。
特に、私が経験した特養のような従来型の施設と、ユニットケアを採用した施設とでは、立ち上げ時の混乱の種類も異なります。
ユニットケアは各ユニットの裁量が大きい分、ユニット間でサービスの質に大きな差が生まれやすく、その調整に多くのエネルギーを要しました。
ご利用者情報の共有不足
オープニング施設では、短期間に多くのご利用者が一斉に入居されることがほとんどです。
本来であれば、一人ひとりの個性や既往歴、生活歴などを職員全員で深く共有し、個別性のあるケアを提供するのが理想です。
しかし、現実にはそのための時間が圧倒的に不足しています。
結果として、情報の共有が不十分なままケアがスタートしてしまい、ヒヤリハットや事故につながるリスクも高まります。
これは介護職として、最も避けたい事態であり、大きなストレス要因となります。
「介護施設のオープニングスタッフはすぐ辞める」を回避し長続きする秘訣
ここまで、オープニングスタッフが直面する厳しい現実についてお話ししてきました。
「やっぱりオープニングはやめておこうかな…」と不安に思われたかもしれません。
しかし、少し待ってください。
物事には必ず光と影があります。
オープニングスタッフとして働くことは、デメリットばかりではありません。
ポイントさえしっかり押さえれば、他では得られない大きなやりがいと成長を手にすることも可能なのです。
このパートでは、どうすれば「すぐ辞める」という結末を回避し、オープニングスタッフとして成功できるのか、その具体的な秘訣をお伝えします。

大変なだけじゃない!介護施設のオープニングスタッフとして働くメリット
厳しい側面を理解した上で、オープニングスタッフならではの魅力にも目を向けてみましょう。
これらは、既存の施設では決して味わうことのできない、特別な経験です。
人間関係をイチから築ける
デメリットの裏返しになりますが、やはり最大のメリットはこれでしょう。
既存施設にありがちな「お局さん」や、長年凝り固まった人間関係のしがらみは一切ありません。
全員が「はじめまして」の状態からスタートするため、フラットな関係性を築きやすいのは事実です。
過去の職場の人間関係に悩んで転職を考えている人にとっては、この上ない魅力と言えます。
施設の文化やルール作りに携われるやりがい
「もっとこうすれば効率的なのに」「このやり方はご利用者のためにならない」。
既存の施設でそう感じたことはありませんか?
オープニングスタッフは、まさにその「もっとこうすれば」を形にできる立場にあります。
自分の意見やアイデアが、施設のルールや文化として根付いていく。
これは、施設の歴史の1ページを自らの手で作り上げるような、非常に大きなやりがいにつながります。
私が訪問介護事業所の立ち上げに関わった際は、ヘルパーさんの移動効率を考えたエリア分けや、記録報告のフォーマットを工夫し、それが採用された時の喜びは今でも忘れられません。
最新の設備で働ける快適さ
物理的なメリットも大きいものです。
建物は新築でピカピカ、介護ベッドや入浴機器も最新式、タブレットでの記録入力システムが導入されているなど、快適な環境で働くことができます。
古い設備に起因する業務の非効率さや、身体的な負担から解放されるだけでも、仕事のモチベーションは大きく変わるものです。
実は「あたり」求人も!後悔しない職場の見極め方と対策
オープニング求人と一括りに言っても、その中身は千差万別です。
入職してから後悔しないためには、求人票の表面的な情報だけでなく、その裏側にある本質を見抜く目を持つことが不可欠です。

運営母体の安定性を確認する
まず確認すべきは、その施設を運営する法人の体力と介護に対する姿勢です。
全国に複数の施設を展開しているような大手法人であれば、立ち上げのノウハウが蓄積されており、しっかりとした研修プログラムや応援体制が期待できます。
逆に、全くの新規参入であったり、小規模な法人が運営母体であったりする場合は、開設準備が不十分なままオープンを迎えてしまうリスクも考慮する必要があります。
法人のウェブサイトを隅々まで読み込み、その理念や事業展開をしっかり確認しましょう。
開設準備期間の長さと内容をチェック
求人情報や面接の際に、オープン前にどれくらいの研修・準備期間が設けられているかは必ず確認してください。
この期間が極端に短い(例えば1週間程度)場合、十分な準備ができないまま、混乱の中でオープンを迎える可能性が高いと判断できます。
理想的には、1ヶ月以上の準備期間があり、その中で理念の共有、介護技術の統一、シミュレーション研修などが計画されているのが望ましいでしょう。
期間の長さだけでなく、その「中身」についても具体的に質問することが大切です。
施設長の経歴や人柄に注目する
施設の方向性を決定づける最も重要なキーパーソンは、間違いなく施設長(管理者)です。
その人のリーダーシップ、経験、そして人柄が、職場の雰囲気を大きく左右します。
面接の際には、あなたが面接されるだけでなく、あなたも施設長を「見極める」という意識を持つことが重要です。
介護現場の経験が豊富か、立ち上げの経験はあるか、そして何より、こちらの話を真摯に聞いてくれるか、ビジョンを熱意をもって語れるか、といった点に注目しましょう。
介護施設のオープニングスタッフに本当に求められる人材とは?
オープニングスタッフとして成功するためには、実は介護スキルと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な資質があります。
自分がその資質を持っているか、客観的に見つめ直してみましょう。

変化を楽しめる柔軟性
オープニングの現場では、昨日決まったことが今日変わる、なんてことは日常茶飯事です。
決まっていないことが多い状況を「ストレス」と感じるのではなく、「自分たちで決められるチャンス」と捉えられるような、前向きな柔軟性が求められます。
完璧なマニュアルがないと動けない人には、正直なところ厳しい環境かもしれません。
指示待ちではなく、自ら考えて行動できる主体性
問題は、誰かが解決してくれるのを待っていても、なくなりません。
「ここがやりにくいから、こう変えませんか?」「こういう備品が必要だと思います」といったように、自ら課題を見つけ、その解決策を考えて提案できる主体性が不可欠です。
全員が「お客様」気分でいては、組織は前に進みません。
周囲と協力できるコミュニケーション能力
様々な経験や価値観を持つ人が集まるからこそ、お互いの意見を尊重し、一つの目標に向かって協力していくコミュニケーション能力が極めて重要になります。
自分の意見を主張するだけでなく、相手の意見に耳を傾け、時には意見を調整し、チームとしての最善策を見つけ出そうとする姿勢が求められるのです。
介護施設のオープニングスタッフは採用されやすいって本当?その裏側と注意点
「オープニングスタッフは大量募集だから採用されやすい」というイメージがあるかもしれません。
確かに間口は広い傾向にありますが、その言葉の裏側も理解しておく必要があります。

大量募集の裏にある「ふるい分け」
法人側も、立ち上げ期が過酷であることは承知の上です。
そのため、ある程度の離職者が出ることを前提に、多めに採用しているケースが少なくありません。
つまり、「誰でもウェルカム」なのではなく、立ち上げ期の混乱や困難を乗り越えられる人材だけが自然と残る、という「ふるい分け」の構造になっている場合があるのです。
「採用されやすい=楽な職場」では決してないことを肝に銘じておくべきです。
未経験者歓迎の言葉を鵜呑みにしない
「未経験者歓迎」という求人も多く見られます。
しかし、これが本当に危険な罠である可能性もあります。
しっかりとした研修体制が整っていないにもかかわらず、人手不足を補うために未経験者を採用し、十分な教育もないまま現場に放り込んでしまう。
その結果、未経験者は何もできずに自信を失い、先輩職員は教育の負担で疲弊するという、最悪の事態を招きかねません。
未経験で応募する際は、特に教育・研修体制の具体的内容をしつこいぐらいに確認することが重要です。
【元職員が語る】入職前に確認すべき3つのチェックポイント
最後に、これまでの私の経験を踏まえ、あなたが後悔しない職場を選ぶために、面接などの機会で必ず確認してほしい具体的なチェックポイントを3つに絞ってお伝えします。
これは、求人票には書かれていない、施設の「本気度」を見極めるための質問です。

チェックポイント①:研修体制の具体的内容
「オープン前に研修はありますか?」という漠然とした質問では不十分です。
「研修期間は具体的に何日間で、その期間中に『誰が』『何を』『どのように』教えてくださる予定ですか?」と、一歩踏み込んで質問してください。
この質問に対して、明確で具体的な回答が返ってくるかどうかで、その法人が人材育成をどれだけ重視しているかが分かります。
チェックポイント②:施設長や管理者のリーダーシップ
面接官が施設長や管理者であった場合、ぜひこの質問をしてみてください。
「この新しい施設を開設するにあたって、施設長(管理者)が最も大切にしたいと考えていることは何ですか?」
この質問への答えには、その人の価値観や施設運営のビジョンが色濃く反映されます。
情熱をもって語れるか、その内容に共感できるか。
あなたがついていきたいと思えるリーダーかどうかを見極める、重要な試金石となります。
チェックポイント③:情報共有の仕組み
「オープン後の、職員間の情報共有はどのような方法を予定されていますか?」と質問してみましょう。
「インカムを使います」「記録ソフトで共有します」といったツールの話だけでなく、「日々の申し送りや、緊急時の連絡体制、会議の頻度や目的はどのように考えていますか?」と、具体的な運用方法まで尋ねてみてください。
立ち上げ期の混乱の多くは、情報共有の不足から生じます。
この点について具体的なプランを語れるのであれば、混乱を未然に防ごうという高い意識を持った職場である可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ:「介護施設のオープニングスタッフはすぐ辞める」説を乗り越えるために
「介護のオープニングスタッフはすぐ辞める」という噂は、残念ながら多くの現場で見てきた現実でもあります。
理想と現実のギャップ、ゼロから始まる人間関係の難しさ、定まらない業務フローは、確かに大きな負担となり得ます。
しかし、この記事で解説したように、オープニングスタッフという働き方は、デメリットばかりではありません。
施設の文化を自ら作り上げるやりがい、最新の設備で働ける快適さなど、他では得られない大きな魅力も存在します。
重要なのは、その光と影の両面を深く理解することです。
運営母体の安定性、研修体制の充実度、そして施設長のビジョン。
これらをあなたの「知識」という武器で見極め、自らに求められる主体性や柔軟性を持って臨むこと。
そうすれば、「すぐ辞める」という結末を回避し、オープニングスタッフという経験を、あなたのキャリアにおける最高のスタートに変えることができるはずです。
あなたの挑戦を、心から応援しています。
コメント